『おっぱいバレー』・・・「道程」そして「道標ない旅」

ただただおバカなだけの映画だろうと予定に入れてなかったのだが、日頃お世話になってる映画ブロガー諸氏、特に私と世代の近い男性陣がまずまずの評価をされているので、ワーナーマイカルの千円の日を利用して観ることにした。

弱小バレー部の新任顧問となった寺嶋美香子(綾瀬はるか)が、おっぱいに憧れるおバカな部員たちと交わした約束。それは「試合に勝ったらおっぱいを見せる」というものだった。

この約束で俄然やる気になった部員たちの姿に感動しつつも、「勝ったら困る!」という本心も当然ある美香子先生。そんな悩める女性教師を綾瀬はるかが好演。当たり年だった昨年に続き今年の彼女もよさそうだ。

おっぱいおっぱいと連呼する部員たちを「オバカなやつらだなあ」と呆れながら見ているうちに、自分が中学生の頃もけっきょくそうだったことを思い出した。女子のブラジャーがどうだとか、誰それ先生の胸がどうだとか、そんな話ばかりしてたよなあ。頭の中がそういうことでいっぱいだった時代なんだ。そもそも当時のエッチな思いって案外純粋なんだよね。具体的な嫌らしさなんてないのだ。ただ見たくて、ただ触りたくて・・・。

この作品が単なるおバカコメディに終わってないことも評価したい。
美香子が抱えるトラウマの重さ。かつて自分の保身のために生徒に嘘をついたことがある美香子は、それゆえ彼らとの約束を反古にしたくない思いが強いのだ。
そして自分が中学生の時に犯してしまった万引き。そのときに出会った原田先生とのエピソードも胸が熱くなる。
墓前で出会う原田の妻(市毛良枝)に家に招かれた美香子が、そこで初めて知る当時の真実も私にはかなり効いた。

70年代を代表する楽曲群も懐かしいものばかり。オープニングの「渚のシンドバット」でつかみはOK。ひたむきな少年たちには「HERO」がバッチリ似合った。レストランでのピアノによる「オリビアを聴きながら」がいつの間にか「卒業写真」になり、続くホテルのシーンで途切れることなくストリングスアレンジに変化していくところなども、なかなかやるな~と感心。
でも一番のツボは永井龍雲の「道標ない旅」だろう。歌詞が高村光太郎の「道程」にこうも見事にリンクするとは今まで気付きもしなかった。(「道標~」は以前カラオケでよく歌ったのに)
初戦を不戦勝で勝ち進んだ2試合目。第2セットを取り返して迎えた第3セット。メンバーを1軍に入れ替えた竜王中にことごとくやられてしまう場面に流れるこの曲がとても印象的だった。

こうした曲についつい気を取られてしまいがちだが、佐藤直紀が創り出す切なくも優しいメロディーが70年代の風景にすんなり溶け込んで、これもまた素晴らしい。彼が手掛けるこの手のBGMはやはりいいなあ。(私がいろんな意味で注目している9月公開の某作品の音楽は彼とのことで、こちらも大いに期待したいところである)

試合に負けてしまったバレー部員と、妙な約束が学校側に知られてしまった美香子。
交わされた約束はどうなるのか。美香子の処分は?
感動のラストはぜひ劇場で。私、かなりウルッときました。これ、隠れ名作となりそうな予感!

 ☆『おっぱいバレー』公式サイト

4/23追記
記事中「私がいろんな意味で注目している9月公開の某作品」とは言うまでもなく『BALLAD 名もなき恋のうた』のことです。元作品、『クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』が純愛を描いたアニメとしては稀に見る傑作であることはご存知の通りで、私の大好きな作品でもあります。
主演俳優が本日逮捕されたことが『BALLAD~』にどう影響するか、ご本人の今後も含めとても心配です。

この記事へのコメント

  • ちゅう

    夫はすごくひかれているようです(苦笑)元気になれそうな映画ですよね。
    チケット買う時、恥ずかしかったですか~(笑)
    2009年04月21日 19:13
  • SOAR

    ちゅうさん、こんばんは♪
    恥ずかしそうにしなければ恥ずかしくないですよ~。
    単なるタイトル、固有名詞ですもん。
    でも、よりによってスタッフがアルバイト風の可愛らしい女のコだったので、ちょっとためらいました(笑)
    こういうときはにーちゃんでいいのに!
    2009年04月21日 20:29
  • ミチ

    こんにちは~♪
    女性的にはこの作品のタイトルよりも「人のセックスを笑うな」の方が窓口で言いにくかったな~(笑)
    中学生男子の頭の中を垣間見せてもらったようで、呆れるやらほほえましいやら。
    音楽も懐かしすぎました~。
    2009年04月21日 20:54
  • rose_chocolat

    リアルで「バカ部」みたいなのが2人もうちに住んでますんで(爆)、彼らの生態は手に取るように分かるんですよ(笑) ぉいぉいそれで隠したつもりかよ!? みたいなw 毎日目がテン&ちょーウケてますね。この映画の中学生クンたちも頭の中がおっぱいでいっぱーい♪なのが面白かった。美香子先生も、あの時代の真面目な先生の感じが(→ 今、ああいう女の先生ってホントいないんですよ。若くても理屈っぽかったり自己満足だったりする人が多くてね)よかったな~。
    2009年04月22日 08:44
  • BROOK

    こんにちは。

    タイトルはちょっと、えっ?と思いますが、
    ストーリーは至って青春物語となっていました。
    それに美香子のエピソードを上手く取り入れつつ、
    ラストは清々しかったですね。♪
    2009年04月22日 15:26
  • SOAR

    ミチさん、こんばんは♪
    なるほど~。「おっぱい」は親しみやすい言い回しでもあるのに対し、「セックス」はストレートですもんねえ。

    はい、あの選曲にはやられました!そういえば作品の冒頭で流れ出すイントロに、最近やられっぱなしの私です。
    2009年04月22日 21:26
  • SOAR

    rose_chocolatさん、こんばんは♪
    私は単純に自分の中学時代と重ね合わせるように観てましたが、なるほど、中学生の息子さんに重ねるパターンもあるわけですね。
    中学生ってエッチなことで頭がいっぱいですからね~。何か見つけても見て見ぬフリをしてあげてくださいね(笑)

    そうそう。私の友人に、子供思いで一生懸命で・・・。そんな素敵な女の先生がいますよ~(^o^)
    2009年04月22日 21:26
  • SOAR

    BROOKさん、こんばんは♪
    美香子の感動エピソードはこの作品にはちょっと反則気味な感じもするんですが、取ってつけたような設定ではなかったのが成功してましたね。
    ほんと清々しいラストでした!
    2009年04月22日 21:26
  • にゃむばなな

    ほんと、あの頃の男の頭の中ってこんな感じでしたよね。
    女子からはいつも軽蔑され、でも男同士で一番盛り上がれる話題でした。
    まぁ今でも下ネタで盛り上がっているのは変わらないのが私の人生ってヤツなんですけどね。
    2009年04月23日 20:22
  • なぎさ

    SORAさん こんにちは♪

    >でも一番のツボは永井龍雲の「道標ない旅」だろう。

    いやぁ~私この時代にどんぴしゃ生きてた人間なんですが、この曲知らなかったんです。
    でもこの曲が流れたシーンと映像がピッタリ合っていましたね。
    そぉ~「道程」とも詩がリンクしていて。
    荒井由実時代のユーミンはLPを買ってよく聴いていました。
    「ひこうき曇」と「ミスリム」は私の青春のバイブル的なアルバムです。

    映画館の窓口で言うのがはばかれらるようなタイトルですが、中身は本当に純粋でけして"おバカ映画"ではありませんでしたよね!
    2009年04月24日 08:45
  • はらやん

    SOARさん、こんにちは!

    彼らと同じくらいの世代の男性はたぶんみなさん、同じような記憶はありますよね。
    今思えばたわいもないようなことで大騒ぎしていたものです。
    オバカ映画かと思っていたら、自分のあの頃を思い出させるノスタルジックな映画だったんですね。
    2009年04月25日 14:38
  • SOAR

    にゃむばななさん、こんにちは♪
    昔も今も気のあう仲間が集まればエロ話に花が咲いてしまいますが、大人になるとその内容が露骨になりがちですよねぇ。
    まあいい年して当時のような純粋さでエッチな話をしてたら、それはそれで危ない気もしますけどね(笑)
    2009年04月25日 16:55
  • SOAR

    なぎささん、こんにちは♪
    永井龍雲、私も実はリアルタイムではないんですよ。学生の終わり頃だか社会人成り立ての頃だかに買った70~80年代のオムニバスCDで聴いてハマりました。
    (今もこれ書きながら聴いてます)
    「おっぱい」って言葉、自然に言えば別に嫌らしさはないんだから、チケットが買いにくいってためらってる人にじゃんじゃん見てほしいですね。いい作品でした!
    2009年04月25日 16:55
  • SOAR

    はらやんさん、こんばんは♪
    何を隠そう私を観る気にさせたのはそちらの記事なんですよ~(笑)
    「これだけレトロな車をそろえました」感が少々気になりましたが、端々に映る小道具のあれこれと懐かしのヒット曲が素晴らしく、ノスタルジーに浸れるその映像と音楽にすっかり魅せられました。
    2009年04月25日 16:55
  • 勝利の女神

    おはようございます!
    私も「おっぱいバレー」観に行きました。
    泣いて笑って、すっきりしました。
    バレーを通して感動!たくさんの人に観てもらいたいと思います(^O^)/
    2009年05月08日 07:04
  • SOAR

    勝利の女神さん、こんばんは♪
    泣けて笑えるいい映画でしたね。
    多くの人に見てもらいたい作品です。

    (当ブログではコピペ送信による複数ブログ同一コメントはスルーまたは削除させていただく場合がありますので、ご理解のほどよろしくお願いします)
    2009年05月09日 21:23
  • hito

    こんにちは~♪

    爽やかな青春ストーリーでしたね。
    昔のこの年齢の男の子ってこんな感じだったな~と懐かしくなりました。
    おバカなんだけど可愛かったです♪

    かかる曲がどれも良かったですね~
    2009年05月12日 10:47
  • SOAR

    hitoさん、こんばんは♪
    こういう爽やかな青春物って、おバカ要素があってもやっぱりいいですよね。
    選曲もなかなかで、歌詞が劇中のシチュエーションにマッチしてる使い方がナイスでした♪
    2009年05月12日 23:56
  • みゆみゆ

    DVDで借りて見ましたが、良かったです!
    男子がバカだなーと思う部分ももちろんありましたが(笑)、ラストでボールを胸に入れて・・・なんてところはバカだなープラスかわいいなーなんて思ってしまったし、かなりうるっときました。
    2009年12月10日 23:57
  • SOAR

    みゆみゆさん、こんばんは♪
    映画館で観るよりDVD借りるときのほうが恥ずかしい気がする・・・(笑)
    電車で去り行く先生を沿線でのパフォーマンスで見送る生徒たちというラストもベタですけど、それでも涙を誘いましたね。今年の邦画では大健闘の良作だと思います。
    2009年12月13日 17:17
  • おくやぷ

    今、映画記事をさかのぼってよませていただいてるのでTB今頃ですが送らせてください(>д<)

    わたしは女なのでみか子の気持ちに共感したし、このおいぱいにかける清々しい情熱に心を打たれましたw

    仲村トオルさんがまた、効いてましたねー。
    2011年01月31日 19:55
  • SOAR

    おくやぷさん、こんばんは♪
    いえいえ、古い記事を読んでいただきありがとうございます。
    中学生たちの清々しいまでの情熱にはホント心を打たれましたねえ。その情熱を、もっと違うものに向ければいいのに・・・なんて思ってはいけませんね。おっぱいだからこその情熱なんです(笑)
    トオルの「ないすおっぱい!」もまさにナイスでした。

    で、えーと。
    すいません! おくやぷさんって男性だと思ってました~(汗)
    2011年01月31日 23:17

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