ストップモーションアニメの傑作『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』が好きな方には特にオススメの作品。本作は児童文学が原作とのことでたしかに少女が奮闘する冒険活劇的なスタイルながら、その世界観はかのティム・バートンにも通じるダークなファンタジー。これ実写でやったら演出次第でかなり怖いホラーにもなり得るんじゃなかろうか。
冒頭で人形を解体(再生)していく映像がしばらく続くのだが、これがまたバックに流れる音楽も含め『シザーハンズ』を思わせるような映像で、ここにもティム・バートン臭が(笑)
ストーリー自体はいかにも子供向けといった単純な内容。引っ越してきたばかりのアパートで封印された小さな扉を見つけた主人公コララインが、扉の向こうの不思議な世界に足を踏み入れてしまったために恐ろしい出来事に巻き込まれながらも、捕らわれた両親や子供のゴーストのために近所の黒ネコと力を合わせて魔女と戦うというお話。
やはり本作で注目すべきはストーリーよりも映像である。想像を絶するような膨大な手順を経て完成したであろうストップモーションアニメのきめ細かい映像はすばらしいの一言。3Dについても元々立体である人形やジオラマを3D撮影しているためかその相性はなかなかのもので、少なくとも私にはこれまで観たどの3D作品よりもしっくりきた。上手い表現が浮かばないが擬似的に立体を表現する3DCGの3D(映画の3D化により表現がややこしくなってしまったものだ・・・)とは違い、立体物だからこその自然かつリアルな3Dといった感じ。
正直映像作品3D化の必然性をいまだに実感できないでいる私にとって、ストップモーションと3Dという組み合わせは今後の3D作品におけるひとつの可能性を見せてくれたようにも思えた。
目がボタンに付け替えられてしまった扉の向こうのパパとママはなんとも不気味で怖い。でも仕事で忙しい現実のパパとママに比べて優しいのでコララインの心は揺れ動く。越してきたばかりの知らない土地で一人で遊ぶコララインのレインコート姿はどこか寂しげで、そんな彼女が偶然見つけた扉の向こうの魅力的な世界と優しい両親に惹かれてしまったのも無理なかったのかもしれない。
ラストでワイビー少年が連れてくるおばあちゃん。彼女の存在もワイビーが届けたあの人形も実はコララインの冒険に大きく関係していた。だから目下のところコララインが扉の向こうでの出来事を語り合えるのはおそらくこのおばあちゃんだけ。「あら、スノードーム割っちゃったのね」なんて言ってるママには、たぶん彼女の冒険など信じてもらえないだろう。
だからこそこのエンディング。「話したいことがたくさんあるの!」とコララインが楽しそうにおばあちゃんを出迎える締めくくりがとても印象に残った。これから始まる二人の壮大な会話を予感させつつ・・・。
メガネの上にメガネの違和感やその重さなど、それまで感じていた私の3Dメガネ問題がREAL D方式の新型メガネの登場によりあっけなく解決したことを以前記事にした。しかし今回は近くで上映があったのがX PAND方式のシネコンのみだったため、REAL D採用の上映館を求めてのプチ遠征。X PANDのメガネも軽量化や装着感の改善がなされるといいんだけどなあ。
ちなみにコララインの両親はともに園芸雑誌ライター。SOAR的にちょっと憧れの職業である(笑)
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KLY
私はXpand方式でしたが、重い上に、今回は色彩が豊かでコントラストがキツメのせいもあって、ただでさえ暗く見える画面が余計暗く見えてしまった感じです。ためしに外したら凄く明るいし。^^;
3Dの良さは確かにあるのですが、これなら2Dで観た方がよかったと感じました。
SOAR
Xpandの3Dメガネは形状が私のメガネと相性悪いんですよね。重さや暗さもほんとよく言われてますので、なにかしらの改良をしてほしいものです。
本作や『カールじいさん~』のような、鮮やかな色彩が見せ所でもある作品は暗くなったら楽しみ半減ですよねえ。映画の3D化はまだまだ作り手の一人歩きの段階なのかもしれません。
悠雅
本当に見事な手作業の結晶。こんなやりがいのある仕事ができる方って、いいなぁ…と本筋とは違う感想を持ってしまいます。
お話はお子様向けでシンプルだけれど、
見方を変えれば、気をつけないとふとした瞬間に、大事な人の心を見失いますよ、というふうにも取れたのが面白かったです。
こちらでは、上映があるだけいい状態、3Dで観れるのも1館だけなので選択肢もなく、
重くて辛い二重めがねで観なければならないのが辛いところ。
何とか快適に観れると嬉しいんですけどね。。。
SOAR
TVCMや子供向け番組などで数十秒程度のクレイアニメを見ただけでもその膨大な撮影作業を思ってしまうというのに、まるまる1本の長編映画ですからねえ。しかもCGと見紛うような滑らかな動き!
それだけで評価高くなっちゃいますよね。
はい、そうですね。“子の心親知らず”的な訓話という見方もできたように思います。
スクリーンの交換など劇場設備の改修のいらないX PANDは、そのかわりメガネに精密機器を組み込むため重くなっちゃうんですよね。
ちなみに使い捨て感覚で配ってるREAL Dのメガネは、単価がたったの数セントだそうです。
sakurai
お恥ずかしい限りですが、最近前知識を入れる暇もなく、ただひたすら見れるものから見る・・ということをやってます。
なもんで、逆にもったいないなああと、感じたのですが、作り手としては、そんな手間隙かかってることはおくびにも出さず、満足してますかね。
家で仕事をしなければならないお父さん、お母さんというのは、なかなか区切りがつけられないんですよね。
あの両親の姿は、とっても非アメリカを感じましたわ。
SOAR
セリック監督の「ナイトメア~」のファンなので、本作は早くからチェック入れてました~。あっちはあっちでティム・バートン好きで観たんですが(笑)
ストップモーションは典型的な自己満足創作ですよね。だから相手がそれに全く気付かなくても、創った側は満足してるのではと思います。
ANDRE
自分も「ナイトメア~」が大好きなので、とても楽しみにしてた作品で、終始ワクワクしながら鑑賞しちゃいました。
ストップモーションのアニメと3Dは、確かに相性が良いですね。人形達が勝手に動く人形劇を目の前で見ているような感覚になりました。ただ、ちょっと画面が暗く感じたのと、メガネonメガネだったのが辛かったのですが(TOHOでの鑑賞でしたので)。
SOAR
CGという擬似的な立体絵ではなくホントに立体なものを撮影しているわけですから、3D映画として理にかなってるように思います。
TOHOが採用しているXPAND、重さと暗さと掛け心地の不満を訴える方が多いようですね。技術の進歩はすばらしいと思いますが、それが観客にわずかでも苦痛を与えるようでは本末転倒ですよねえ。
由香
お話は単純でしたが(笑)、結構ダークな部分があって、こういうのは好きです♪わりと引き込まれて観たわ~
ただ、コララインがイマイチ可愛く思えなかったのが残念で・・・
コララインのご両親は園芸雑誌ライターでしたね~
スッゴク大変そうでしたが、、、SOARさんにとってピンッとくるお仕事でしょうね
SOAR
ダークなファンタジー全般が好みというわけではないのですが、好きなものはとことん好きな私。本作はとても気に入りました。たしかにコララインにもう少しかわいらしさがあってもよかったですね。
でもちょっとすねた感じの女の子っぽさはよく出てたように思います。
書くこと好きだし花好きだし、やっぱり転職するならこれやりたい~♪