『名探偵コナン 天空の難破船（ロスト・シップ）』・・・コナンとキッドと新一と

バイオハザード絡みの航空パニック物となった劇場版コナンの第14作。この設定に私が反応しないわけがない。午前に鑑賞した『アリス・イン・ワンダーランド』がまさかの期待ハズレに終わったので、レイト鑑賞の本作に期待しつつ再度劇場へ。

コナンらしさという観点でいうとどうもいまひとつだった気がする。前々作『戦慄の楽譜』では楽器の構造や演奏法、絶対音感、音階を使った暗号など音楽という題材にとことんこだわったストーリーに圧倒された。続く前作『漆黒の追跡者』は黒の組織との対決についてははぐらかされてしまったものの、二つの事件が徐々につながっていく見せ方は巧かった。劇場版ならではのこうした深みが今回は控えめに思えたのだ。
またコナンシリーズには事件の背景やそれを追うコナンの推理展開に“それはないだろ～”くらいの理屈っぽさ（ようするに屁理屈の次元）があるほうが“らしい”と私は思うのだが、本作はそのあたりも弱く感じた。さらに終わってから気付いたことだが、今回の事件は殺人ではなく明確な死者も出ていない。これもまたコナンらしさを弱めた原因であろう。

とまあ辛口気味に書き始めたが、それでもやはりおもしろい。
特に今回はハリウッド映画を意識したかのようなシーンが満載である。武装テロリスト集団が細菌研究所を襲撃し爆破するとか、テロリストが細菌を持ち出したらしいことが判明し感染の恐怖からパニックに陥る市民とか、飛行中の飛行船にヘリが強行ランデブーするとか、テロリストたちの真の目的が実は意外なところにあるとか、誰が犯人なのか二転三転するどんでん返しとか・・・。
中でも思わず息を飲む・・・どころか心臓が止まりかけたシーンがひとつあった。少なくと絵的には本作中一番の見せ場であること間違いない。船内には怪盗キッドも変装して乗り合わせていて、このシーンでの彼の一瞬の行動がまたスゴイ。犯人グループにつかまってしまったコナンにとんでもないことが起こるこのシーン、これ以上のネタバレは控えるのでぜひ劇場でご覧いただきたい。

怪盗キッドが登場する航空パニック作品としてなら、第8作の『銀翼の奇術師』のほうがその緊迫度は上だろう。もっとも本作は舞台こそ空だがパイロットの負傷や機体の損傷、残燃料等による墜落の恐怖に主眼を置いているわけではないので、同列に扱うべきではないかもしれない。
大空の密室で起こる感染に疑問を抱くコナン。発症する人としない人は何が違うのか。細菌アンプルは本物なのか。なぜ爆弾が仕掛けられたのか。飛行ルートに犯人たちの目的が隠されていないか。こうした点が徐々に解き明かされていく展開は、やっぱりコナンらしさである。（さっきと言ってること違うじゃん）

最後に見所をもうひとつ。工藤新一と江戸川コナンが同時に存在する・・・。これまでにも平次や灰原がこのトリックに協力した作品があり、シリーズでしばしば登場するシチュエーションだ。現実にあり得ないこの状況がどうやって作り出されるのかや、佐藤・高木両刑事の反応がなかなか面白い。今回は蘭が動揺するひとひねりも効いているのでファンならニヤリ度も高いのではないだろうか。

エンドロール後にオチがつくのはテレビ版も含めコナンシリーズお約束中のお約束。うっかり途中で席を立つことのないようご注意を！

　★劇場版名探偵コナン過去記事
　　『名探偵コナン 戦慄の楽譜（フルスコア）』・・・“絶対音感”の解釈
　　『名探偵コナン 漆黒の追跡者（チェイサー）』・・・あの戦闘ヘリって！？

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