『アンノウン』・・・これぞ伏線回収の心地よさ

学会に参加するために妻同伴でドイツを訪れた学者マーティンが交通事故に遭い、病院で目覚めると事故前後の記憶を失っていた。断片的に蘇るかすかな記憶を頼りに妻のいるホテルに行くと、そこにはマーティンを名乗り妻に寄り添う見知らぬ男がいて・・・。

序盤で提示されるこの展開は確実に興味を誘う。空港に到着しタクシーでホテルへ向かう仲むつまじい夫婦の姿はなんだったのか。妻は自分を知らないと言う。見知らぬ男に寄り添い私の夫はこの人だと言う。

えーっ？　なんでなんで～？？？

観客は本当のマーティンはリーアム・ニーソン演じる男のほうだと知っている。ところが周囲の状況がことごとく彼に否定的なため、ついには彼自身も自分を疑い始めてしまう始末。そうこうするうちに今度は彼を狙う殺し屋まで現れる。

前半にこれでもかというくらい散りばめられる謎や疑問が、後半に確実に回収されていく心地よさがたまらない。空港での夫婦の会話が最初の伏線だったことに気付いた時には正直ヤラレタと思った。あれは仲のいい夫婦ゆえの会話ではなかったのだ。なるほど、そのものずばりの物言いを妻はしていたわけか。

マーティンの記憶喪失の症状が実はポイントで、すべてを忘れているわけではなく、例えば学会の発表に出席しなければならないことや、自分が本物であることを証明してくれる学者仲間に連絡を取ろうと試みるくだりなど、学者としての自分についての記憶はなんとか残っている。
これがあるからこそ成り立つストーリーであり、同時にこれは事の真相がわかった時点で観客を唸らせるための重要な仕掛けになっているとも言えよう。


・・・公開直後の作品だし、オチが勝負の作品でもあるのでこの辺りで切り上げておこうか。ネタバレ配慮、ネタバレ配慮っと。
まあとにかく、私にとっては想定外の面白さだった。

鮮やかな伏線回収を堪能できることは保証する。ただし、問題もある。綿密な伏線回収を見せる作品の場合、辻褄あわせのための都合主義が必然であり、本作にもその傾向が無きにしも非ず。理詰めで鑑賞するタイプの方だとこういう点が気になってしまうかもしれない。

これはもう両刃の剣なのだ。多少のムリには目をつぶり、オチへと誘う伏線回収の妙を味わってこその作品である。

Comments

[BROOK]

ストーリーを読んだだけでは、なぜそうなるのか？と疑問だらけでしたが、
いざ本編を鑑賞してみると･･･
これは“凄い”としか言いようがありませんよね。
ホント伏線の回収の仕方が上手かったです。
そして、“真相”にはただ驚くばかりでした。
爽快感はかなりあったと思います。

[SOAR]

BROOKさん、こんばんは♪
そうそう、事故って目覚めたら妻にも忘れられているという序盤。宇宙人や夢オチ等の反則技でもない限り説明は付かないだろうと意地悪く観てたら（笑）、いや～恐れ入りました。伏線を回収しながら見事にまとめちゃいましたね。
この“真相”、これは盲点でしたよ。