ガン患者を主人公に据えた作品だが、壮絶な闘病物語でもなく、その生死をめぐる感動号泣ドラマでもない。世話役を買って出たはずの恋人は去ってしまうし、親友も影で涙を流すどころかガンをネタにして悪ふざけの日々。担当となった新米セラピストもどこか頼りない。
それなのに観ているうちに心がポカポカと温かくなっていく展開が実に爽やか。ストーリーにドラマチックな起伏のある作品ではないのだが、ガンを告知された青年アダムが周囲の支えの中で希望を見出していく過程とラストシーンがとにかく心地よかった。
親友からガンであることを打ち明けられたとき、人はどのように接するだろうか。今までと変わりない付き合いを続ける意思にウソがなくても、実際には交わす会話の一言一言にさえ気を遣ってしまうに違いない。
実は今、ガンを患い闘病中の友人がいる。入退院を繰り返している彼女に対し日々のメールは欠かさないものの、遠方を理由に会いに行けないでいる私。いつでも電話して来いよと言うくせに、自分からは電話できないでいる私。面と向かい合うのが怖いのだ。メールではなく声で言葉を交わすのが怖いのだ。
そんなネガティブな私と比べ、アダムの友人カイルのなんとも能天気・・・いやポジティブなことか。アダムの生存率50%をギャンブルなら高確率だと笑い飛ばし、アダムがガンであることをネタにしてナンパも成功させる始末。腫れ物に触るような両親や恋人とは正反対のこの態度。
そんな彼がアダムの知らないところでガンについて勉強していたことがわかるシーンがある。これにはやられた。彼が繰り返し読んでいたのであろうガン患者への接し方についての本。そこに残るおびただしい数の付箋とドッグイアは、アダムを心から心配している何よりの証拠。だからこその親友。
セラピストのキャサリンも、カイルと共にアダムの闘病生活を医師とは違った角度から支えたひとり。同時に彼女自身もセラピストとして確実に成長して迎えるラストシーン。どうやらプライベートでもアダムのよきパートナーになりそうな予感。二人の交わす「どうする?」が最高の締めくくりである。
さあ、お二人さん。どうするんですか?(笑)
ジョセフ・ゴードン=レヴィットが演じるアダムは、『(500)日のサマー』でのトム役に雰囲気がそっくりで、なんだかトムのその後の波乱に満ちた人生のようでもありおもしろかった。
キャサリン役のアナ・ケンドリック。見覚えある彼女のことを鑑賞中どうしても思い出せず、帰宅後拙ブログにて確認して納得。『マイレージ、マイライフ』の新人ちゃんだ。あちらでの役どころも、本作同様“新米ながら主人公とのかかわりを通して人間的に一皮剥ける脇役”だったねぇ。うん、カワイイ♪
さてと。私も迷ってないで、必ずその友人に会いに行こう。カイルに負けないくらいの、とっておきのジョークをひっさげて。神妙な表情など見せるものか。
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この記事へのコメント
にゃむばなな
そう、実際にそういう立場にいると改めて自分の弱さに悔やんでしまうんですよね。
でも多分その友人の方に会われたら「何だ、簡単なことだったんだ」と思われるでしょうね。
だってカイルがやっていることは何も特別なことはしていないんですから。
オリーブリー
そうなんですね、お友達が…。
ガンに限らず、病気を抱えてる人と接する難しさってあるんですよね。
特に日本人の気遣いは、そっとしておくのが美徳みたいな…。
当然、それぞれのタイプにもよりますが、そんな点でも色々と考えさせられる作品でした。
飛び切りのジョークで笑わせてあげてくださいね♪
純粋な主人公のタイプや、コミカルな笑いがあるヒューマンストーリーは「(500)日のサマー」と同じでした。
ジョー君は役へのリサーチが徹底してるし、セスは、実際、こうやって接していたんだろうな~と感じるようなお芝居でした。
みゆみゆ
事実を受け止めたくない、見たくない・・・というのは、決してネガティブではなく、優しい人だからこそ思ってしまうことだと思います。
というか、看病している人も暗くならないように明るく振舞っていたつもりでも、こういった映画なんて見られない!と思う私の方がネガティブだと思います(--;
でも、身内だけでなく、私の周りにいた他の患者さんにも言えることですが、本人がどんなに明るく振舞っていても一番辛いのは患者さん本人。
ぜひそのお友達を少しでも励ましてあげてくださいね。
SOAR
患者が親子や兄弟、夫婦や恋人といったパターンの作品なら数知れずでその持っていき方も似たり寄ったりなんでしょうが、本作では親友の目線が印象的に描かれるんですよね。
カイルの行動が必ずしも現実的とは思いませんが、普段と変わらないあの明るさは見習うべきでしょうね。
SOAR
不定期ではありますが年に2~3度会う機会がある友人です。映画もこれまでに何度一緒に観たことか・・・。本作の二人のように同僚でもなく近くに住んでるわけでもないので単純に例えることはできませんが、明るく接する大切さを学んだ思いです。
セス・ローゲン、1月の『グリーンホーネット』がイマイチだったせいもあって今年はあまりいいイメージがなかったのですが、本作で好感度アップです!
SOAR
身内の方を亡くされたとのことで、本作でのセス・ローゲンの役どころを支持するレビューを目にするのはお辛いかもしれませんね。
彼が接したのはあくまで友人であり、突飛な行動言動は身内の場合には適さないかもしれません。
ただ、そんな彼も患者である友人の知らないところで真剣にガンに向き合おうと努力していたことがわかるシーンがあり、このこととの対比でカイルという役がが評価されていることも知ってほしいと思います。