『ロボジー』・・・ドモアリガトーミスターロボット(懐)

2012年最初の映画鑑賞は私の大好きな矢口監督の鈴木さんシリーズ(?)最新作!
これまでの作品のような終盤へ向けての盛り上がり感は少々控えめだが、笑いと感動のツボをうまくおさえたストーリー展開はやっぱり矢口監督ならではの面白さ。“ジジイとロボット”というある意味対極の存在がよりによってひとつになることで起こるドタバタを交えたハートウォーミングストーリーは絶品。たっぷり楽しませてもらった。


・・・と。本題に入る前に、一月も早や半ばを迎えてしまいましたが今年最初の記事ということでまずは新年のごあいさつを。
2012年と聞いて、エメリッヒが描く壮絶な終末世界を、車で飛行機で逃げに逃げたジョン・キューザックの姿を思い出す映画ファンも多いことでしょう。また昨年は実際に未曾有の災害がこの国を襲った年でもありました。
そうした天変地異あるいは大きな事件事故に見舞われることなく平穏な2012年となることを心から祈りつつ、今年も『SOARのパストラーレ♪』をよろしくお願いします。


どこか昭和の白物家電を思わせるレトロな造形が魅力の自立型二足歩行ロボット“ニュー潮風”。それにしてもよくできてるよこのロボット。うまいこと考えたものだ。いや、ほめているのは劇中の開発チームである木村電器デコボコ3人組じゃなくて、そのデザインを考えた映画スタッフのほう。
作品世界でのニュー潮風は元はインチキではなくちゃんとしたしたメカニカルなロボットなのだから、映画の設定に合わせて中に人間が入ることを前提に関節形状や構造を決めてしまうと当然のことながら違和感が出てくるはず。
そのあたり監督は大いにこだわったのだろう。そしてデザイン担当もそのこだわりにとことん付き合い応えたのだろう。例えば脚。股関節、膝、足首はシンプルな一軸構造であり不自然な隙間も見当たらない。これはまさしく単純機械の関節そのものである。肘もそう。これがもし隙間のあるフレキシブルな構造で、なおかつそれをキャンバスやゴムブーツ等の非金属素材で覆ってしまったら、いかにも人間の被り物として作られた感が出てしまったに違いない。(首、肩、腰には苦労の跡も・・・)
自転車に乗れるほどの可動範囲を各関節に持たせながらも、見た目にはきっちりとメカニカルな構造。もちろんCGに逃げることも一切ない。矢口監督、恐れ入りました。

ユニークなキャスト陣にあって一際存在感を見せるのが濱田岳。彼ってほんとイイんだよなあ。独特のペース独特のテンションでロボット開発部をとりあえず仕切ってる、そのユルさとヘンな生真面目さが絶妙だ。
開発部員のデブとノッポを従えたチビというデコボコ構図はそれだけでも笑えるのだが、このチビ・デブ・ノッポという設定はストーリー上重要であることにも注目したい。デブ担当のチャンカワイ・・・もとい川合正悟が劇中で説明するように、3人の体型ではニュー潮風に入れないのである。この“起”から“承”への絶対不可欠な設定にも笑いの要素をきっちり埋め込んでくるのがいかにも監督らしいね。

ミッキー・カーチス・・・もとい五十嵐信次郎演じる鈴木のおじいちゃんも実に味わい深い。偏屈ジジイであり周囲を困らせる人物ながら、日常生活でふと見せる寂しそうな表情や哀愁漂う後ろ姿がまた印象的。素っ気無い孫たちが嫌いなようで本当は大好きなおじいちゃん。孫たちもそれは同じ。突如家にやって来たニュー潮風と記念写真を撮る孫二人が、「なんかおじいちゃんの匂いがする」と言い出すシーンはほろりとさせられた。
(そんなおじいちゃんの別の“匂い”が、エレベーターのシーンでは一転して大爆笑となるのだが)

ニュー潮風の追っかけ女子大生葉子役の吉高由里子もいいねえ。前半、ロボット博会場でニュー潮風に助けられた彼女が大学のロボット研仲間を巻き込みながらどんどんハマっていく様子はとにかく楽しい。しかしロボットに関する高度な知識が裏目となって木村電器の三人組から敬遠されることになった彼女は、あることがきっかけでニュー潮風の秘密に気付いてしまう。
木村電器とニュー潮風への想いが裏切られた形となった彼女のその後の複雑な心情変化を吉高が好演。追い詰められた木村電器の記者会見場に駆け付ける彼女のシーンは最高だ。
また、このシーンでおじいちゃんが集まった記者たちの目を欺くべく利かせる機転もお見事。中盤のコスプレイベント会場での出会いはここへの伏線だったか。

公衆トイレの酔っ払い(竹中直人)は高校教師なのかなあとか、おじいちゃんの娘婿(田辺誠一)は全日空のパイロットなんだろうなあとか、脇役キャラの面々について監督の過去作品と勝手にリンクさせつつ観るのもまた楽し。田畑智子なんて思い切った転職したもんだ(笑)

笑って笑って、その後にジーンと来る感動。で最後にもいちど笑って終われるのが矢口ワールド。木村電器ロボット開発部の3人組が新たに4人組となり、ニュー潮風もよりスマートな新型が完成。本格的なロボット開発が軌道に乗り木村電気は順風満帆。ところがこれがまたしても・・・!

このシンプルでストレートなオチも爽快。鈴木のじいちゃん、木村電器をまた助けてあげてくれよな!


そうそう、『ハッピーフライト』同様、恒例のサイドストーリーも機会があればお見逃しなく~♪

この記事へのコメント

  • にゃむばなな

    矢口組と言わんばかりのお馴染みの俳優さんがあちこちに出演しているのを探すのも楽しいですよね。
    特に竹中直人さんがどこに出演しているのかは矢口監督作品を見る時の大きな楽しみなんですよね。
    2012年01月15日 17:52
  • rose_chocolat

    Styxの "Mr.Roboto"が好きな私としては大いにツボりました。
    竹中さんは予告では使わない方がよかったかも。。。
    2012年01月16日 00:25
  • BROOK

    面白かったです♪
    大爆笑とまではいきませんが、
    クスリと笑わせてくれる小ネタ満載でした。

    ミッキー・カーチスこと五十嵐信次郎さんの演技は、
    今作の見どころですよね♪

    てっきり本物のロボットが最後の記者会見の時に登場すると思っていたのですが、
    まさかああいったオチになるとは…。
    2012年01月17日 16:08
  • SOAR

    にゃむばななさん、こんばんは♪
    にゃむばななさん絶賛の田畑智子(の制服姿)とかね~。
    『ハッピーフライト』でもそうでしたが、竹中直人は一瞬ですから見逃せません(笑)
    公衆トイレのシーン、できれば公開までヒミツにしておいて欲しかったなと。
    2012年01月18日 23:01
  • SOAR

    rose_chocolatさん、こんばんは♪
    スティクスのコレ、私もそれこそ初代ウォークマンで聴いてた世代なので懐かしかったです。
    予告やCMでは気付かなかったのですが、オリジナルではなく五十嵐信次郎のカバーバージョンなんですね~。凝ってるなあ。
    竹中シーン、やっぱりそう思いますよね~。ネタバレもったいなかった。
    2012年01月18日 23:02
  • SOAR

    BROOKさん、こんばんは♪
    笑いの小ネタの使い方がほんと巧いですよね監督。脈略のないギャグではなく、ちゃんとストーリーに乗っかってる感じがします。役者さんたちのアドリブも多いようで、楽しそうな撮影現場が目に浮かびます。

    学生たちの議論に感化されていく3人組の様子から、私もそのオチを思ったんですがね、監督の狙いはそこじゃなかったですね~。
    2012年01月18日 23:27
  • Nakaji

    こんにちは♪
    面白かったです。突っ込みどころ満載なんですが、
    テンポもいいし、ずっと笑いながらみておりました。
    吉高さんのおたくぶりがよかったです。
    2012年01月20日 12:05
  • SOAR

    Nakajiさん、こんにちは♪
    テンポのよさも矢口監督の得意とするところですよね。吉高由里子、よかったですねー。いろんなキャラを幅広く演じ分けられる女優さんだと常々思ってますが、今回のオタクも巧かったです。
    2012年01月22日 08:53
  • おくやぷ

    おもしろかったです~
    今年もよろしくお願いします!

    社員3人の情けない子犬顔に、中にはいることを決意する鈴木さんが、
    お助けじいちゃんでかっこよかった
    最後の笑顔もかっこよかった~

    音楽がまたいいですね
    懐かしくて
    ここできてほしいってときにかかって

    吉高さんの暴走ぶりがものすごく可愛く感じました
    2012年01月26日 22:22
  • SOAR

    おくやぷさん、こんにちは♪
    じいちゃんの態度や風貌にカッコよさはないし、彼には特に熱い思いもないんだけど、最後の笑顔がね。いいんだよね。
    あと、大口径の長玉構える吉高ちゃんを助けるときのさりげなさとか孫思いの一面とか、ほんとこのじいちゃん、いいキャラでした。

    イメージ曲もぴったり。よくぞスティクス持って来た!さすが私と同世代の矢口監督です。
    2012年01月29日 12:21
  • はぎお

    こんにちは。
    吉高さん演じるロボットオタクの女子大生、なかなか面白かったです♪
    事情を知った時に、騙されたと感じるんじゃなくて「ロボットへの冒涜」に怒りを覚える感性が最高です♪♪
    濱田君の何とも情けない感じも秀逸で(^^ゞ
    2012年02月12日 23:25
  • SOAR

    はぎおさん、こんばんは♪
    ロボットをこよなく愛する女子大生、好演でしたね。彼女の怒りの本質は、自分が必要とされなかったあたりにもあるんだと思います。だからこそのラストの展開。ミッキー・カーチスと吉高由里子、この騒動に関わっていく二人の心理がポイントでもありますね。
    2012年02月13日 23:27

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