『トップガン マーヴェリック』・・・主役はトムキャットからスーパーホーネットへ

『トップガン』の続編の話はうわさレベルではかなり以前からあったわけだが、具現化する前にアメリカ海軍のF-14トムキャットは退役し、マルチロールのF/A-18ホーネットもE/F型のスーパーホーネットに代替わりし、さらに言うならA-6イントルーダーもS-3バイキングも空母から姿を消した。つまり空母の航空隊編成が前作の80年代からガラッと変わってしまった今、たとえトム・クルーズが再び主役の座に就いたとしてもトムキャットが存在しない現在のアメリカ海軍を舞台にしたトップガンは果たして続編として成立するのだろうか。そんなことをもやもやと思いつつ臨んだ『トップガン マーヴェリック』。

・・・そんな戸惑いはいらなかった。

冒頭のシーンからトップガンの世界観に一気に、しかも心地よく入り込める。
スチーム式カタパルトの蒸気が漂う甲板、デッキクルーたちのハンドサインやポージングのかっこよさ、そしてあの深いディレイの効いた荘厳なBGM。次々と発艦していく機体はトムキャットではないけれどこれはまさしくトップガンの世界である。と同時に故トニー・スコット監督への最大級のリスペクトが伝わってくる極上のオープニング!

教官マーヴェリックとトップガン出身の若手パイロットたちに課される今作のミッションはレーザー誘導爆弾による対地攻撃だ。作戦機はE型のダガー1と2、F型のダガー3と4の計4機。ダガー1が一次攻撃、ダガー2が二次攻撃を担当し、ダガー3はダガー1と、ダガー4はダガー2とそれぞれ編隊を組みつつレーザー照射を担当するという布陣。
攻撃目標に向かう谷間の飛行は高度を上げすぎるとSAM(地対空ミサイル)の餌食、時間がかかりすぎると敵戦闘機Su-57(?)に捕捉されるというスリリングな内容で、これはもうエースコンバット(もしくはエリア88)の世界である。

人間ドラマのほうも見ごたえあり。グースの息子が海軍パイロットになっていることで物語が大きく揺れ動く。グースが弾くピアノの上にちょこんと座っていた男の子が父の遺志を継ぎパイロットとなり、そしてマーヴェリックと再会・・・。欲を言うならメグ・ライアンの登場があってもよかったかもしれない。

実写映像をふんだんに使ったことで迫力は文句なし。それだけでなくマルチロール戦闘機F/A-18-E/Fスーパーホーネットならではの、空中戦とは一味違う精密爆撃という対地ミッションの一連の流れをフィクションではありながらもリアルに描いている作品として意義深い。『ライトスタッフ』や『エネミー・ライン』を思わせるようなシーンもあり、そのあたりも私は存分に楽しめた。

そして!
事前情報を極力シャットアウトしての鑑賞だったおかげで終盤にはまさかのうれしいサプライズが待っていた!(思えば伏線あったよね)
そう、なんだかんだ言ってもマーヴェリックにはやっぱり、可変翼のドラ猫がよく似合うのだ。

この記事へのコメント

  • にゃむばなな

    ご無沙汰しております。

    『トップガン』の続編と聞いて、これが見たいと思っていたことが全てスクリーンに映し出されてましたよね。
    それがOPからEDまでずっと。
    そしてトニー・スコットとドン・シンプソン。この2人の名前もきちんとクレジットしてくれたことにも感動でしたよ。
    ありがとう、トム・クルーズ!
    2022年06月20日 01:00
  • SOAR

    にゃむばななさん、こんばんは。
    ストーリーや世界観は現在の情勢に合わせていながら、一作目を観た時と同じ雰囲気、高揚感を終始堪能できました。これはやはりトム・クルーズが主演だったことが大きいでしょうね。時の流れを考えれば世代交代の物語のほうが自然なのにそうしなかった製作陣に感謝です。
    2022年06月26日 01:50