『アントキノイノチ』・・・“あのときの生命”を忘れずに生きよう

人はなぜ生きるのか。生きようとするのか。あるいはなぜ自ら死のうとするのか、他人を殺そうとするのか。 高校時代に親友を“殺した”青年と、同じ頃に“殺された”ことがあると語る少女。遺品整理業という特殊な職業に身を置く二人の心の揺らぎを通して「生命(いのち)」の意味を問う、ずしりと重みのある物語だった。 さだまさしの原作を一ヶ月ほど前に読み終えての鑑賞。 新たな仕事に就き、病んだ心も徐々…

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『コンテイジョン』・・・接触感染の恐怖

ウィルス感染のパンデミック映画に何を期待するかで評価や感想が二分しそうな作品であった。 発症から感染拡大に至る経緯を軸として描きながら、患者、役人、警察や軍、科学者、医療関係者といった人々それぞれのドラマを絡め、その背景に製薬会社の陰謀やら軍事機密やらを設定したうえで、ホラーやサスペンスに振るか、あるいはSFやアクション系の味付けをする・・・とまあこの手の作品の基本はこんなところだと思う。…

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『ステキな金縛り』・・・せっかくの三谷ワールドが

前半はとにかく笑った。クスクス笑いではなく声を出してこんなに笑った映画は久しぶりだ。コメディとしての三谷ワールドはやはりおもしろい。 三谷幸喜の手にかかると俳優さんたちのイメージがガラリと変化する楽しさもある。本作での深津絵里の可愛らしいこと。『悪人』で殺人犯との逃避行を繰り広げた彼女と同一人物とは思えないほどである。もちろん役者本人の才能あればこそなのだが、それを引き出す三谷マジックはお…

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『ミッション:8ミニッツ』・・・そして彼女の指がEnterキーを叩く

時空超えSF大好きな私にとって久々に登場のこのジャンル。主人公がある時間を繰り返すうちに状況が変化していくというアイデアは過去にも秀作があるが、本作はそれをさらに一捻り二捻りさせたうえでの二段オチという凝りに凝った作品である。 少々ややこしいし最後まで疑問の残る部分もあれこれとあるにはあるが、それでもとにかく面白かった。 ---以下ネタバレあり--- 冒頭に時空超えと書いた…

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『カウボーイ&エイリアン』・・・物足りない印象なれど

エイリアン・ラッシュにしてスピルバーグ・ラッシュ。 ここ最近のそんな流れに乗っかる作品がまたひとつ。とはいえ西部開拓時代にエイリアンが現れたら・・・という発想は斬新だしきっと面白いに違いない。製作陣にはビッグネームが名を連ね、しかもダニエル・クレイグにハリソン・フォードだ。予告に登場する飛行メカにも興味津々で・・・。 洋画邦画ともに話題作目白押しの10月。その中でも私的注目度一番のそんな本作…

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『一命』・・・武士の誇りと男の尊厳

武士の誇りとは何か。命とは何か。 家族を愛する若き武士の切腹をめぐって繰り広げられる壮絶な人間ドラマに、我を忘れてのめり込んだ2時間だった。 武士にとって切腹とは潔いけじめの付け方であり、名誉ある最期にして誇り高き死に様である。当時においては神聖な行為だったはず。少なくとも今を生きる我々はそう認識している。 となればそれを逆手に取った“狂言切腹”など、やはり卑劣な“強請り”行為と言…

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『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』・・・新解釈の前日譚

公開を待ち望んでいた本作。期待以上の面白さにぐいぐい引き込まれた。何が面白いって旧シリーズとの新解釈なりの絶妙なリンクだ。 というわけで旧シリーズのおさらいも交えつつ・・・。 1作目『猿の惑星』の前日譚という位置付けの本作であるが、考えてみればあの自由の女神に象徴される人類滅亡とそこに至るまでに起こった人間と猿の立場逆転の経緯は旧シリーズで再三語られる上(3作目『新 猿の惑星』で未来…

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『はやぶさ/HAYABUSA』・・・“みんな、ただいま”

MUSES-C はやぶさプロジェクトがこうまで脚光を浴びたのは、満身創痍で長い旅路の果てに流れ星となって帰ってきたあの劇的な映像によるところももちろん大きいだろう。帰還成功イコール燃え尽きることというサンプルリターン探査機の宿命は多くの人の心に響いたはずだ。 しかしあの“奇跡の帰還”の何年も前から、本作の原案とも言える「はやぶさ君の冒険日誌」(命名前は「みゅーぜすしー君の冒険日誌」)にたくさん…

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